委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
「お兄ちゃん、記憶を取り戻したいよね?」


 真琴は体を前に乗りだし、目を輝かせてそう言ったが、


「そりゃあ……まあな」


 俺は、どちらかと言うと気のない返事をしてしまった。もちろん自分の過去は大いに気になり、出来れば思い出したいと思う。
 しかし、自分がワルだったという事と、それを裏付けるような過去の画像を見た今では、今のままでもいいのかな、なんて思ってしまう自分もいた。いわゆるリセットだ。おふくろの思うつぼ、って事になってしまうが。


「だよね!」

 そんな俺の心の葛藤に真琴は気付かないようで、やけにテンションが高い。


「じゃあさ、これから家に行こうよ」

「家って、誰のだ?」

「もちろんわたしのだし、1年前まではお兄ちゃんも住んでた家に決まってんじゃん」

「ああ……」

「お兄ちゃんの部屋はそのままにしてあるんだ。だから、そこに行けばきっと思い出すと思うのよね!」

「なるほど……」

「じゃ、行こう」


 特に断る理由が俺にはなく、張り切った様子の真琴に続き、俺たちは喫茶店を出た。たちまち夏の陽射しに照らされたが、冷えた体にはその温もりがむしろ心地よかった。

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