委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
本当の俺の家に向かい、俺たちは電車に乗った。家のある場所は、今おふくろと住んでるマンションからそう遠くはないところだった。今日は平日のため、当然ながら田村さん、いや、俺のおやじさんは、会社へ行っていて家にはいないらしい。
行きながら、俺は真琴からおやじさんの話を聞いた。おやじさんは、どちらかと言うと仕事重視で、家の事はほとんどおふくろに任せきりだったらしい。そのため、俺に関するおふくろの“暴挙”に、賛成ではなかったが止める事は出来なかったのだという。
しかし、その事がきっかけで夫婦仲はますます冷え込み、おふくろが言い出した離婚に、おやじさんはあっさり承諾したらしい。ちなみにおふくろが離婚を言い出したのは、おやじさんとの仲が冷え切った事も一因だが、一番の目的は俺を騙すためらしい。つまり、俺の記憶が戻らないように苗字を変え、住む家や家族構成をも変えるという……
知れば知るほど、おふくろの暴挙には驚かされる。そこまでやるか、って感じだ。俺一人のために。
「昔からお母さんは、お兄ちゃんを溺愛だから。ところが、お兄ちゃんは高校に入った頃からワルぶるようになって、お母さんには逆らうし、相当イライラしてたよ。だからお兄ちゃんが事故って記憶を失くしたのを幸いに、改造して自分の操り人形にしようとしてるのよ」
という事らしい。そんなのは、俺には到底理解出来ないのだが。
真琴の先導で、俺たちは住宅街に建つある一軒家に着いた。そう大きくはないが、小さくもない、いわば普通の二階屋だ。当然ながら、表札には“田村”の文字が刻まれている。
「どう? 何か思い出した?」
家を見上げていた俺は、真琴を向いてゆっくり首を横に振った。自分でも呆れるほど、全く何も思い出せなかったのだ。
行きながら、俺は真琴からおやじさんの話を聞いた。おやじさんは、どちらかと言うと仕事重視で、家の事はほとんどおふくろに任せきりだったらしい。そのため、俺に関するおふくろの“暴挙”に、賛成ではなかったが止める事は出来なかったのだという。
しかし、その事がきっかけで夫婦仲はますます冷え込み、おふくろが言い出した離婚に、おやじさんはあっさり承諾したらしい。ちなみにおふくろが離婚を言い出したのは、おやじさんとの仲が冷え切った事も一因だが、一番の目的は俺を騙すためらしい。つまり、俺の記憶が戻らないように苗字を変え、住む家や家族構成をも変えるという……
知れば知るほど、おふくろの暴挙には驚かされる。そこまでやるか、って感じだ。俺一人のために。
「昔からお母さんは、お兄ちゃんを溺愛だから。ところが、お兄ちゃんは高校に入った頃からワルぶるようになって、お母さんには逆らうし、相当イライラしてたよ。だからお兄ちゃんが事故って記憶を失くしたのを幸いに、改造して自分の操り人形にしようとしてるのよ」
という事らしい。そんなのは、俺には到底理解出来ないのだが。
真琴の先導で、俺たちは住宅街に建つある一軒家に着いた。そう大きくはないが、小さくもない、いわば普通の二階屋だ。当然ながら、表札には“田村”の文字が刻まれている。
「どう? 何か思い出した?」
家を見上げていた俺は、真琴を向いてゆっくり首を横に振った。自分でも呆れるほど、全く何も思い出せなかったのだ。