委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 その家の玄関の前にはガレージがあり、先日避暑地に行った時に乗せてもらった車が駐車していた。おやじさんは電車で通勤しているらしい。俺はそっちへ行き、その近辺を見回した。


「お兄ちゃん、何してるの?」

「あ、いや、何でもない」


 俺が乗っていたらしいバイクを探したのだが、無かった。おそらく廃車されたのだろう。もしバイクに乗れば、俺は記憶を取り戻すかもしれない。あるいはそのきっかけぐらいにはなるのではないか。

 確証はないが、そんな予感がしたのだ。しかし真琴にそれは言わないことにした。言ってもどうにもならないからだ。


 真琴が鍵を開けて家に入り、その中を見回したが、何も思い出せなかった。俺にとっては、まるっきり知らない家だ。真琴が゛どう?”という感じで俺を見たが、俺は黙って首を横に振った。


「お兄ちゃんの部屋に行こう? 2階なんだ」


 真琴は、一瞬しょげた顔をしたが、すぐに気を取り直すかのように微笑んで言い、俺は「ああ」と頷いて真琴の後から階段を上がって行った。

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