委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
部屋の中をぐるりと見回したが、特には何も思い出せなかった。かつては俺の部屋だったはずだが、少しもそんな実感が湧いてこない。
「ああ、C.ロナウドかあ……」
白い壁にロナウドの特大ポスターが貼ってあった。もちろん、彼はサッカー界のスーパースターだ。相変わらずカッコいい。
「そういう人は憶えてるんだよね……」
「“そういう人”って?」
「身近じゃない人。お兄ちゃんは身近な人の事だけ忘れてるらしいよ」
なるほど。俺は人に関する記憶を失っているはずなのに、ロナウドはもちろん、今の日本の首相も昔から知っている。
不思議な事もあるもんだなあ。なんて、俺は他人事みたいに思った。
「お兄ちゃんはサッカーが好きだったもんね。憶えてる?」
「ああ、憶えてるさ」
と言ったものの、それは中学までの事で、高校からの記憶はやはりなかった。中学の時まではサッカークラブに入っていたのだが……
「中学まではな。高校ではやらなかったんだろうか。サッカー……」
「やってないよ。どうしてって聞いたら、東高のサッカー部は弱いし、バイトするから時間がないって……」
「そうか」
確かに、俺が言いそうな事ではあるな。
「それはそうと、何か思い出せそう? 何となくでもさ……」
「いや、悪いけど、全然だ」
期待に目を輝かせる真琴には本当にすまないと思うが、何ひとつ思い出せそうもなかったのだ。
「そう言わず、もっと良く見たら? たとえば、その引き出しの中とかさ……」
真琴がそう言いながら指差したのは、部屋の隅にある机の引き出しだった。
「あ、ああ。そうだな」
俺は机の前に行き、なんだか他人の物に手を触れるようで嫌な気分だったが、気を取り直して引き出しを手前に引いた。すると、真っ先に俺の目に飛び込んだのは、A4サイズの水色の封筒だった。
「ああ、C.ロナウドかあ……」
白い壁にロナウドの特大ポスターが貼ってあった。もちろん、彼はサッカー界のスーパースターだ。相変わらずカッコいい。
「そういう人は憶えてるんだよね……」
「“そういう人”って?」
「身近じゃない人。お兄ちゃんは身近な人の事だけ忘れてるらしいよ」
なるほど。俺は人に関する記憶を失っているはずなのに、ロナウドはもちろん、今の日本の首相も昔から知っている。
不思議な事もあるもんだなあ。なんて、俺は他人事みたいに思った。
「お兄ちゃんはサッカーが好きだったもんね。憶えてる?」
「ああ、憶えてるさ」
と言ったものの、それは中学までの事で、高校からの記憶はやはりなかった。中学の時まではサッカークラブに入っていたのだが……
「中学まではな。高校ではやらなかったんだろうか。サッカー……」
「やってないよ。どうしてって聞いたら、東高のサッカー部は弱いし、バイトするから時間がないって……」
「そうか」
確かに、俺が言いそうな事ではあるな。
「それはそうと、何か思い出せそう? 何となくでもさ……」
「いや、悪いけど、全然だ」
期待に目を輝かせる真琴には本当にすまないと思うが、何ひとつ思い出せそうもなかったのだ。
「そう言わず、もっと良く見たら? たとえば、その引き出しの中とかさ……」
真琴がそう言いながら指差したのは、部屋の隅にある机の引き出しだった。
「あ、ああ。そうだな」
俺は机の前に行き、なんだか他人の物に手を触れるようで嫌な気分だったが、気を取り直して引き出しを手前に引いた。すると、真っ先に俺の目に飛び込んだのは、A4サイズの水色の封筒だった。