委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 俺が無言で桐島さんを見ていると、彼女はいくぶん顔を赤らめ、俺の視線に耐えかねたように目を泳がせた。そんな桐島さんを見るのは初めてだが、どこか頼りなげで、今すぐ抱き寄せたい衝動を俺は堪えなければならなかった。


「あの日の私はどうかしてたんです。後で思い返したら恥ずかしくて、恥ずかしくて、出来れば相原君には忘れてほしいかなと……」


 と、桐島さんは気丈にも言葉を続けた。最後の部分は、消え入りそうなか細い声だったが。


 あの日の桐島さんは確かに変だった。ドラマか映画の世界に入り込んだのかなと、今までは思っていた。だが、今は知っている。

 今の俺、つまり相原悠斗と、彼女が付き合っていたかつての俺、田村悠斗が、彼女の中でシンクロしていたのだと。

 それにしても、忘れてくれと言われても返答に困る。忘れられるはずもないし。もっとも、もっと前の記憶ならすっかり忘れてしまったのだが。

 実際に返答に困ったし、薬を飲んでた頃の俺は頭の回転が鈍かったから、黙っていても不思議はないだろう。という事で、やはり俺は無言を続けたのだが……


「やっぱり……怒ってる?」

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