委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
「じゃあさ……」


 と俺が口を開くと、桐島さんはやや上目遣いで俺を見て、「ん?」という表情をした。その顔はすこぶる可愛いが、だからと言って俺の中のイライラが収まる事はなかった。


「僕たちは、これからも友達同士って事かな?」

「うん。そうしよう? 相原君が良ければ、だけど」


 桐島さんは即答だった。しかも、おそらく学校では決して見せないであろう、可憐な笑顔で言った。


 俺はそのレアな笑顔にやられそうになりながらも、益々イライラを募らせていた。


 そのイライラを鎮めるかのように、俺はストローを使わずに苦いアイスコーヒーをゴクゴクッと飲んだ。そしてグラスをテーブルに置くと、ゴトンと思いの外大きな音がした。

 案の定、桐島さんはそれに驚き、ピクッと反応して目を見開いた。

 しまった。俺のイライラを桐島さんに気付かれてはいけない。今は、まだ……


「あのさ……」

「は、はい」

「話を変えていい?」

「う、うん。いいよ」

「英語の問題集でさ、どうしても解らないところがあるんだ……」

「あ、そうなの?」

「うん。それでね、桐島さんに教えてほしいんだけど、いいかな?」

「いいけど、私で解るかなあ……」

「大丈夫だと思うよ。じゃ、早速で悪いけど、僕の部屋に来てくれる?」

「えっと……うん、わかった。ちょっと待って?」

「ありがとう。あ、ゆっくり飲んでよ。慌てる必要はないからさ」


 よし、と。英語の問題云々は、咄嗟に思い付いた嘘だ。ただし、桐島さんを部屋に呼んで、具体的にどうするという事までは考えていない。ただ、ここでは話をしずらいと思っただけだ。

 俺はもう一度グラスを持ち、今度はゆっくりとコーヒーを口に含んだ。

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