委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
「違うのか?」

「それは……違うような、違わないような……」

「なんだよ、それ。はっきりしねえんだな……」


 確かに、自分でもはっきりしなかった。あの雨の日の出会いでは、僕ははっきり桐島さんに惹かれた。一目惚れと言っていいと思う。

 でも今日の桐島さんでは、決して嫌いというわけではないのだけど、僕なんかじゃ近付くのもおこがましいような気がする。


「ごめん。それより桐島さんって、いつもあんな感じなの?」

「ああ、そうだよ」

「前から?」

「ん……いや、2年の時は違ってたな」

「そうなの?」

「ああ。確か2年の時は普通に可愛い女子だったと思う」

「ほんとに? どうして変わっちゃったの?」

「どうしてかなあ。俺はクラスが違ったから、よくわかんねえなあ」


 なんだあ。そこのところをもっと知りたいんだけどなあ、と思っていたら、


「おお、いたいた。あいつに聞いてみよう」

「え、あいつって……」

「おい、沙織!」


 阿部君は、いきなり僕らの前を歩いていた女子高生に声を掛けたが、沙織と呼ばれたその女子は、僕も知ってる子だった。

 僕の斜め後ろ、つまり阿部君の隣の席の、渡辺沙織さんだ。

 渡辺沙織さんはピタっと足を止め、クルッと僕らを振り向いた。渡辺さんも阿部君に負けず劣らず活発で、


「馴れ馴れしく呼ばないでくれる!?」


 かなり気の強い子だった。

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