委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
「それ、誰から聞いたの?」

「本人です」

「本人!?」

「メールですけど。急遽アメリカへ留学することになったからって。向こうで落ち着いたら、連絡をくれるって……」

「連絡はあったの?」


 無いだろうな思いつつ聞いたら、やはり桐島さんは首を横に振った。


「今でも待ってるんだ? あいつから連絡が来るのを……」

「あいつ?」

「あ、いや、あの人」

「もう待ってません。1年ですよ? そんなに待ち続けるほど、私は愚かじゃ……」


 そう言って桐島さんは顔を歪ませた。たぶん笑おうとして、笑えなかったんだと思う。おそらく桐島さんは、今でも待ってるんだと思う。田村悠斗からの連絡を……


 俺は無性に腹が立った。おふくろにだ。

 おふくろが俺のスマホだか携帯を使って桐島さんにメールしたに違いない。アメリカへ行くとかいう、嘘っぱちのメールを。

 今の今まで、俺はおふくろに殆んど怒りを覚えてなかった。しかし今は、怒りで腹わたが煮えくり返りそうだ。

 おふくろが、田村悠斗と桐島さんを引き裂いたのだ。正直、俺ではあるが田村悠斗に同情する気持ちは湧かないが、桐島さんが憐れだ。

 渡辺沙織さんが言うには、桐島さんは田村悠斗と別れてから性格が一変したという。それだけ大きな痛手を負ったという事だ。

 おふくろの奴……

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