委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
「怒ってないよ。どうして僕が怒るの?」


 私が率直に聞くと、ようやく相原君はそう答えてくれた。でも、彼にしては珍しくぶっきら棒な言い方で、言葉とは裏腹に、彼は怒っているのだと思う。あるいは、私に呆れているのかもしれない。


「だって、急に変な事を言いだすし、泣いたり、抱き着いたり、ふしだらな女と思われたかなって……実際に、そうなんだけどね」


 相原君は、私の、たぶん最後に言った言葉に「えっ?」と驚いた顔をした。
 私は、悠斗の事を相原君に話そうと思う。ひとつには、それをしないとあの日の事を説明出来ないのと、いつまでも黙っているのは、相原君を騙しているようで嫌だから。それによって、相原君から本当に嫌われてしまうかもだけど……


「相原君も聞いてると思うけど、私……男の人と付き合ってたんです。1年前までは」


 意を決してそう切り出し、視線を上げて相原君を見ると、彼はいくぶん目を見開き、驚いたような顔をしていた。もしかして、相原君は知らなかったのだろうか。私の噂を聞いてなかったのだろうか。

 ううん、そんなはずない。私と2年の時からクラスが一緒の沙織さんと相原君は仲が良いそうだし、仮に彼女から聞いてないとしても、他にも大勢の人が知ってる事なのだから。

 悠斗の話を続けようと思ったけど、さっきの店員さんがトレーにアイスコーヒーを2つ乗せてやって来たので、それは中断しなければいけなかった。


 相原君は、無言のままストローでアイスコーヒーをかき混ぜていた。今日もブラックのまま飲むのだろう。そんなところも悠斗と同じだ。私は甘くしないと飲めないから、いつものようにガムシロとミルクを入れた。


 悠斗との事、どこまで話そうかな。もちろん、全部は話せないけども……


< 169 / 227 >

この作品をシェア

pagetop