委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
「あの……知ってましたか?」

「うん、知ってた」


 やっぱり知ってたかあ。でも、だったらどうして相原君はさっき驚いたような顔をしたんだろう。私から言い出した事が、彼には意外だったのかな。


「そうだよね。あのね、彼、田村さんっていうんだけど、名前が相原君と同じなの」

「あ、そうなんだ……」


 相原君は、気のないような反応だった。悠斗と名前が同じって事も、彼は知ってたのかもしれない。それとも、どうでもいい、とか……


「それと、声が相原君とそっくりで、身長とか歩き方までそっくりで、だから……」

「うん」

「錯覚しちゃったの。あの時……」

「錯覚?」


 それまで反応が薄かった相原君だけど、“錯覚”という言葉に大きく反応を示した。なぜかは解らないけど。


「そう、錯覚なの。びっくりしたでしょ?」

「あ、ああ。そうだね」

「本当にごめんなさい」


 私はペコッとお辞儀をし、やっと言うべき事を言えた事でホッとし、アイスコーヒーを口に含んだ。これであの日の私の失態の訳を、相原君は解ってくれたと思う。


「じゃあさ、僕たちは、これからも友達同士って事かな?」

「うん。そうしよう? 相原君が良ければ、だけど」


 私は即座にそう答えた。相原君が解ってくれた事が嬉しくて、自分の頬が緩むのが分かった。でも……

 何かが違うような気がする。何がどう違うのか、それを考えようと思ったのだけど、


ゴトン!


 突然大きな音がしてびっくりしてしまった。それは、相原君が乱暴にグラスをテーブルに置いた音なのだけど、いつも動作が丁寧でゆっくりな彼にしては、とても珍しい事だった。


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