委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 もしかして、相原君は怒ったのだろうか。でも、何に対して?
 思い当たる事がないような、あるような……


「あのさ……」


 私がそれについて考える暇もなく、相原君が口を開いた。


「は、はい」

「話を変えていい?」

「う、うん。いいよ」


 彼はどんな事を言うんだろう、と思ってドキドキしたのだけど……


「英語の問題集でさ、どうしても解らないところがあるんだ。桐島さんに教えてほしいんだけど、いいかな?」


 と言われ、私は拍子抜けしてしまった。ということは、さっきは怒ったのではなく、たまたま手が滑ったとか、そういう事だったのかもしれない。


「いいけど、私で解るかなあ……」

「大丈夫だと思うよ。じゃ、早速で悪いけど、僕の部屋に来てくれる?」

「えっと……」


 どうしよう。簡単に男の子の部屋になんか行ってもいいのかな。
 でも、彼の部屋にはこの間も行ったし、友達同士だし、また錯覚を起こしたりしないように私が気を付けさえすれば、何も問題はないわけで……


「うん、わかった。ちょっと待って?」


 そう言って私はグラスを持ち上げた。残りのアイスコーヒーを急いで飲むために。すると、
 

「ありがとう。あ、ゆっくり飲んでよ。慌てる必要はないからさ」


 相原君はそう言って爽やかに微笑んだ。そんな彼の笑顔を見て、一瞬でも危険を感じた自分が、むしろ恥ずかしかった。


 本当は悠斗の事をもっと話すつもりだったんだけど、相原君はあまり関心がないみたいだから、もういいかな。

< 171 / 227 >

この作品をシェア

pagetop