委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 なぜか相原君は黙ってしまった。もう聞くだけ聞いたから、という事だろうか。

 今日の彼は本当におかしいと思う。すごい意地悪だし。なので、私はさっさと用事を済ませ、帰りたいと思った。


「もう、いいでしょ?」

 それはもちろん、悠斗の話の事だ。

「え? あ、うん」

「どの問題なの?」

「どの問題と言われても……」

「何言ってるの? 英語の問題でしょう?」

「英語? ……ああ、そうだったね」


 相原君は何か考え事でもしていたのか、ピントのずれた受け答えをすると、よろよろと立ち上がった。そんな仕種はある意味いつもの彼らしく、私はホッとしたのだけど……


「ごめん。英語の問題っていうのは、嘘なんだ。桐島さんと二人になりたくて、嘘ついた」


 と相原君は言った。

 私は彼を見上げ、“ごめん”と言いながらも、少しも悪びれてそうもない彼の澄ました顔を見て、怒りがふつふつと込み上がった。


「もう……相原君、最低! 帰る!」


 私はそう叫ぶとすぐに立ち上がり、ドアに向かって歩いた。私がこんなにも腹を立てたのは久しぶりだと思う。もしかすると、今までで一番怒ったかも。

 さっさとドアを開けて帰ろう。そう思ってドアノブに手を掛けたのだけど……


「ひゃっ」


 後ろから肩をがっちりと掴まれてしまった。相原君の、大きな手で……

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