委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
過去を取り戻す
 俺は仰向けでベッドに寝ころび、白い天井を見上げた。桐島さんに叩かれた頬が熱を持ち、ヒリヒリと痛い。

 あんな風に彼女に接するつもりはなかった。彼女に触れたくて部屋に呼んだのは確かだが、あんな酷い言葉を彼女に浴びせるつもりはなかった。思えばこの間もそうだった。頭の中で何かのスイッチが入ったようだが、いったい何のスイッチなんだか……


 もしかして……田村悠斗か? あの男が、俺の中で目覚めようとしているとか?  


 なんてな。それじゃまるで二重人格じゃないか。そうじゃない。あの時の俺は……俺だった。むしろ、この間までの相原悠斗が、俺じゃないんだ。

 そうだよ。俺は……田村悠斗なんだ。あの顔は正直好きになれないが、あれが過去とは言え、俺自身だという事を認めなくてはいけないんだ。


 そう言えばあの時、俺が桐島さんの首筋に口を当てる寸前、ある映像が俺の脳裏を過ったんだ。上気した桐島さんの悩ましい顔が、まるでフラッシュバックのように……

 そうか。つまりあのスイッチは、記憶のスイッチだったんだ。思えば、俺は相原悠斗の時から桐島さんの夢を見ていた。おそらく桐島さんといると、記憶のスイッチが入りかけるんだと思う。だったら、桐島さんにさっきの事を謝り、真実を告げ、俺の記憶を取り戻す手助けをしてもらおうか……

 いや、それはまだ早い。その前に、なんとか自分の力で記憶を取り戻したい。そしてもし記憶が戻り、これはあまり考えたくはないのだが、もしも俺、つまり田村悠斗が、遊びで桐島さんと付き合っていたとわかったら、俺はこのまま彼女の前から姿を消そう。


 くそ、また頭痛がしてきた。


 目を閉じてそれに耐えていると、やがて痛みが収まると共に睡魔が俺を襲い、深い眠りにと落ちていった。やるべき事を、しっかりと胸に刻みながら……

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