委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 ガチャリと、マンションのドアが外側から開錠される音がした。ようやくおふくろが帰って来たらしい。俺はそれを待ってはいたが、いつものように出迎えたりはせず、リビングのソファに浅く座っていた。


「あら、いたのね。ただいま……」


 おふくろは俺を見て驚いていた。俺が出迎えなかったからだろう。


「お帰り……」

「コンビニに行ったの? それともこれから行くのかしら。あ、そうだ。行くんだったら明日の……」

「行かないよ」


 おふくろは俺が出掛ける支度をしてるから、もしコンビニに行くのなら何か買い物を頼みたかったようだが、それは見当違いだ。


「そう? じゃあいいわ。着替えてくるわね」


 そう言いながら、おふくろは手で自分の肩を揉む仕種をした。また肩が凝っているのだろう。おふくろは酷い肩凝り症だから。そんな時、いつもなら俺が肩を揉んであげるのだが、今夜はそんな気にはなれない。悪いけど。


「母さん」

「ん?」

「話があるんだ。そこに座ってくれないかな」


 俺は顎で向かいのソファを指した。


「話? その前に着替えさせてちょうだい。肩が張っちゃってるのよ」

「待てないよ、おふくろ……」

「えっ?」


 自分の部屋に行き掛けていたおふくろだったが、俺の言葉に驚いたらしく、目を見開いて固まっていた。

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