委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
「おふくろ……?」

「私がどれだけあなたに期待したか解る? 私がどれだけあなたに尽くしたか、あなたは知らないでしょ!?」


 う、逆ギレかよ……


「それなのにあなたと来たら、髪は茶色に染めるし、バイクには乗るし、終いには女まで作って……。東高に入ったまではいいけど、遊び歩いてるから成績はどんどん下がるし、それでも私立の医学部ぐらいには行けるかなと思ってたのに、あなたと来たら……」


 おふくろは、すごい勢いでまくし立てた。なるほど、おふくろは長男である俺を溺愛し、って自分で言うのもおこがましいが、期待して育てたものの、俺がひねくれたものだから怒り心頭、って事だろう。

 そんなような事は真琴から聞いていたのであまり驚かなかったが、最後の部分が気になった。


「おふくろさん、最後のところはどういう事かな?」

「何がよ?」

「ほら、“私立の医学部には行けたのに……”とか言ったじゃないか。それはどういう意味?」

「な、何でもないわよ」


 おふくろは目を泳がせ、バツの悪そうな顔をした。本当は触れたくない事を、つい口走ってしまった、という感じだ。

 いったい何を言いかけたんだろうか。大学と言えば……あ、そうか。


「わかった。夜学に行くって言ったんだね、俺?」


 おふくろはピクッと反応したから、たぶん図星なのだと思う。


「そうなんだろ? 俺が使ってた机の引き出しに入ってたんだ。理学部二部の学校案内が。どうして俺は夜学に行こうとしてたのかな?」

「知らないわよ、そんな事……」

「そんなはずない。おふくろなら知ってるはずだ。俺はそれが気になってしょうがないんだ。頼むから教えてくれよ」

「知らないったら知らないのよ。どうせ女のためでしょ!?」


 おふくろは本当に知らないようだ。おふくろが言う女とは霧島さんで間違いないと思うが、霧島さんと夜学が本当に関係するんだろうか。仮にそうだとして、いったいどんな関係があるんだろうか……

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