委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
「おい、もったいつけんなよ?」

「そんなんじゃないわよ」

「じゃあ何だよ?」

「それは……せっかく相原君が玲奈を好きになってくれそうなのに、言ったら引いちゃうかなあと思ってさ……。あんたなら大丈夫だと思うけど」

「それはどういう意味だよ?」


 渡辺さんの言う意味は僕も解からなかった。僕だと引き、阿部君だと大丈夫な話って何だろうか……


「だってさ、相原君って見るからに純情そうだもん。相原君ってさ、女の子と付き合った事あるの?」

「えっと、それは……」


 いきなりな渡辺さんからの質問に、僕は即答出来ずに口ごもってしまった。


「あるの?」

「そりゃあ、あるよな? いくらなんでも高3なんだからさ……」


 すかさず阿部君がそうフォローしてくれたのだけど……


「いいえ、ないと思います」

「ないのかよ? っていうか、“思います”って何だよ。おまえまでもったいつけんのか?」

「あ、ごめん。ない、です」


 別にもったいつけたわけではない。女の子と付き合った記憶はないと思う。思うんだけど、僕の場合、過去の事にはあまり自信が持てないところがある。記憶に曖昧な事が多いからだ。そういう事は僕だけではないと思うけれども。

 それと、女の子と言えば時々見る夢がある。それが本当にただの夢なのか、もしかすると過去にあった現実の事なのか、自分でも判らなくなる時があるんだ。


「でしょ? だからさ、純情な相原君には言わない方がいいのかなって……」

「僕は純情じゃないです」

「え?」

「ん?」


 僕の言葉に、渡辺さんも阿部君も驚いていた。

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