委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 喫茶店へ向かう途中、沙織は「ヒントだけでも……」とか言って俺から話を聞き出そうとしたが、俺はがんとして口を割らなかった。こんなおもしろい話を、そう簡単には言いたくないからだ。


「今日はどのフラッペにしようかなあ」

「俺はこの抹茶のやつにする」

「あんた、またそれ? 相原君は? またイチゴのにする?」

「ん? 俺はアイスコーヒーでいい」

「そうなの? なんで?」

「フラッペなんて、そんな甘ったるいのは嫌いだ」

「…………へっ?」


 沙織は目をまん丸にして驚いていた。もちろん、相原の態度に。以前の相原は、ほとんど自己主張をしない、軟弱なやつだったから。


「玲奈は? 何にする?」

「私も、アイスコーヒーで……」

「うん、わかった」


 仕切るのが好きらしい沙織は、4人分のオーダーを店員に告げた。そして店員が行くと、向かいに座る桐島さんの手を握った。


「玲奈、久しぶりだね! こうして一緒にお茶するの」

「うん、そうだね」

「ごめんね?」

「ううん、私こそ……」

「眼鏡外したんだね?」

「うん」

「幸せ?」

「え? うん、すごく幸せ……」


 そう言って微笑む桐島さんは、すっげえ可愛くて、つい俺は彼女に見惚れてしまった。すぐに相原に睨まれちまったけども。


「よかったよ。玲奈が立ち直ってくれて。もう、あいつの事は吹っ切れたみたいだね?」

「えっ?」


 おいおい、沙織さんよ……

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