委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 すると、渡辺さんは「ううん」と言いながら首を横に振った。


「同じクラスどころか、他校の人よ」

「他校?」

「そう。東高は知ってるでしょ? 当時はあそこの3年生。つまりあたし達の一級上の人なんだって」

「ひぇー、東高かあ」


 東高は県下でトップの進学校で、僕らの高校より偏差値はかなり高い。ちなみに僕は西高から編入して来たのだが、もちろん西高よりも上だ。


「名前は確か“田村さん”、もしかすると“田中さん”だったかな」

「何だよそれ……」

「だって、一度ぐらいしか聞いてないんだもん」

「あ、そう。それにしても東高の秀才と委員長ねえ。なんか、お似合いって感じがするな?」

「そう思うでしょ? ところが全然違うんだよね、これが……」

「ん?」

「その人ね、不良なのよ。暴走族なの」

『暴走族!?』


 思わず僕と阿部君でハモってしまった。

 僕は、おそらく阿部君もだと思うけど、その田村さん、もしくは田中さんという人について、東高出身の優等生で、たぶん眼鏡を掛け、色白で細身な男をイメージしたのだけど、それと“暴走族”というワードは、まるっきりそぐわなかったからだ。

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