委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
「東高にそんな奴いるわけないだろ?」


 そうそう、僕もそう思った。


「知らないわよ。現にいたんだもの……」

「そうかなあ。何て名前の暴走族なんだ?」

「知らなーい」

「知らなーいって、おまえなあ。だったら聞くが、何を根拠に暴走族って言ってるんだよ?」

「だってその人、バイクに乗ってたもん。東高の制服のままバイクに乗ってうちの学校の校門まで来て、後ろに玲奈を乗せて走り去るところを見た人がいるんだから。その子が言うには、かなりのイケメンなんだって……」

「ちょっと待て。それで暴走族か?」

「そうよ?」

「おまえなあ……。バイクぐらい、俺だって乗ってるっつうの」

「じゃあ、あんたも暴走族!?」

「違ーう! 俺は純粋なライダーなの!」

「仮面ライダー?」

「アホか!?」

「あのさ……」


 阿部君と渡辺さんの愉快そうな会話に、僕は割って入った。


「その人は暴走族ではないと思うけど、制服を着たままバイクに乗るって事は、少なくても不良だった可能性は高いよね?」

「でしょ? 不良よ、絶対に……」

「絶対とは言えないが、俺もバイクで学校には来ないもんな……」


 僕らは「うーん」と黙り込んだ。


東高の秀才で、不良のライダー。しかもイケメンかあ……

 田村、もしくは田中というその男のイメージを、僕は今一つ思い浮かべる事が出来なかった。

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