委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
「それで? 委員長はそいつと別れたんだよな?」


 阿部君が渡辺さんに話の先を促し、僕はその男の事を考えるのをやめ、渡辺さんの話に耳を傾けた。


「うん。たぶん、だけどね。ちょうど去年の今頃だった。玲奈、それまではニコニコして幸せそうにしてたんだけど、ある日から急に元気がなくなっちゃって、学校を何日も休んだりして、どうしたのかなあと心配してたんだけど、そのまま夏休みに入って、夏休みが終わったら、あんな風になっちゃった」

「あんな風って……?」

「今の玲奈よ。眼鏡なんか掛けちゃって、誰とも話さなくなって勉強一筋って感じ。あたしが“何かあったの?”って聞いても、“何もない”しか言ってくれなくて……」

「じゃあ、その時に東高の男とダメになったんだろうな?」

「だと思う」

「なるほど。失恋の痛手が彼女を変えたわけだ?」

「というかさ、あの男に弄ばれて、捨てられたんじゃないかと思うのよね。妊娠させられたっていう……」

『妊娠!?』


 また僕と阿部君とでハモってしまった。


「う、噂よ。単なる根も葉もない噂」

「おどかすなよ……」

「ごめん。でも、そんな噂を立てられるほど、玲奈の落ち込みようは尋常じゃなかったって事なの」


そんな事があったのか……

 僕は桐島さんが可哀相になり、同時に田村だか田中だか知らないが、相手の男に怒りを覚えた。とその時、阿部君がその大きな手で僕の肩をガシッと掴んだ。そして、


「相原、おまえの出番だな」


と言った。

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