委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
委員長に胸キュン
 彼女のすぐ近くまで行ったが、彼女が本当に桐島さんかどうかはまだ判らなかった。考えてみれば、僕はまだ桐島さんの顔をはっきりとは覚えていないんだった。


「あの、隣に座っていいですか?」


 彼女が桐島さんでも、あるいはそうでないとしても、取り敢えず隣に座ろうと思って声を掛けた。すると、彼女は僕の声にピクッて感じで反応し、パッと顔を上げて僕を見上げたのだけど、そんな彼女の反応に、僕は既視感を覚えた。


 何だろう、この感じは。前にも似たような事があったような……

 ああ、そうか、思い出した。あの雨の日の帰り、僕の横を走り去る桐島さんに声を掛けた時も、彼女はこんな反応だったんだ。それと、文化祭の実行委員になった日の帰り、教室を出る彼女に後ろから声を掛けた時もそうだった。という事は……


「あ、相原君……」

「やっぱり桐島さんでしたね?」


 という事であり、もしかしてだけど、桐島さんって、僕に対して特別の反応をしてくれるのかもしれない。それはつまり、僕は桐島さんにとって特別なのかも……


「隣、いいですか?」


 そんな期待感を持って、もう一度言ってみたのだけど……


「どうぞ」


 桐島さんは不機嫌そうに低い声で言い、前を向いてまたテキストに視線を落としてしまった。

 やはり僕が桐島さんにとって特別だなんて、甚だしい勘違いだったらしい。


 とは言え、こんな所で桐島さんに会えたのはとてもラッキーだったと思う。思わずにやけそうになるのを抑えつつ、僕は桐島さんの横に静かに腰を下ろすのだった。

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