委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 どうして少女は行ってしまったんだろう。そんなに僕と歩くのが嫌だったのだろうか。雨で全身がずぶ濡れになるよりも……

 いや、そんなネガティブに考えるべきではないな。確かに鈍臭い僕なんかと歩いたって一つも面白い事はないだろう。しかし単に駅へ濡れずに歩くというだけの事で、例えばデートに誘ったわけじゃないのだから、僕に魅力があるとかないとか、そういう問題ではないと思う。たぶんだけど。

 つまり少女は、見ず知らずの男と一つの傘に入って歩く事を良しとしなかったのだと思う。それだけ潔癖性なのか、あるいは男嫌いか、もしかすると付き合っている彼氏がいて、その男に気兼ねしたとか……

3つ目のはないと思いたいところだけれども。


 それにしても、あの高校にあんな魅力的な子がいるとは知らなかった。少女が着ていた制服は、間違いなく僕が通う学校のそれだった。編入して来てまだ数ヶ月だから、彼女に限らず知らない生徒ばかりではあるのだけど。

 何年生なんだろう。少し大人っぽい感じがしたから僕と同じ3年か、あるいは2年か。たぶん1年という事はないと思う。


ああ……

 名前はもちろん、学年もクラスも分からないのでは、また出会うなんて出来ないんだろうなあ。


 僕は大きく溜め息をひとつつき、駅への道をトボトボ歩き始めるのだった。

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