委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 夜もかなり更けた頃、僕が部屋で勉強をしていると、玄関の扉がカチャッと解錠された音が聞こえ、僕はペンを机に置いてそちらへ向かった。


「母さん、お帰り」

「ただいま……」


 疲れた様子の母が仕事から帰って来た。母はある大学病院の医者で、毎晩帰りが遅いんだ。

 僕は母と二人きりでこのマンションに住んでいる。父親はいない。その事にはっきり触れた事はないのだけど、母はいわゆるシングルマザーなのだと思う。


「いつも遅くまでご苦労様」

「ありがとう。悠斗は勉強してたの?」

「うん、一応ね」

「あなたこそご苦労様。受験まであと半年ちょっと。頑張らなくちゃね?」

「わかってる。母さん、晩ご飯は食べたの?」

「ううん、食べてない」

「じゃあさ、スパゲティ作るから、その間に母さんはシャワーでも浴びててよ?」

「え? いいわよ、自分でするから。受験生にそんな事させられないわ」

「受験生にも息抜きは必要だよ。いいから母さんは早くシャワーを浴びて着替えてよ。ね?」

「そう? 悪いわね?」

「いいって」


 こんな感じで、僕と母は仲良く暮らしている。母は僕に対して口うるさく、心配性で過保護なところもあるけど、とても優しい人なんだ。

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