委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
「全部吐いてしまいなさい」

「う、うん」


 母が俺の背中をさすりながら言い、真琴さんも俺の肩を支えてくれていた。

かっこわりいなあ。俺、どうしちまったんだろう。さっきまでは絶好調だったのに……


 胃の中身を全部吐き、それで吐き気は治まったものの、今度は寒気がして体がガタガタ震えだした。

 田村さんが後部座席の俺のシートを後ろに倒してくれ、仰向けに寝た俺の体に母がタオルケットを掛けてくれた。


「母さん、俺……?」

「“俺”?」

「どうしたのかな?」

「か、風邪ね。熱が出て来たわ」

「そうかなあ……」


 風邪を引いた事はもちろんあるが、こんな症状は経験ないと思う。


「風邪にも色々あるから」


 なるほど。医者の母がそう言うならそうなんだろう。


「病院へ行こうか?」

と田村さんが言ったが、

「いいえ、家に帰れば薬があるから。とにかく急いでください」

「了解」

という事になった。


 母はそのまま後部座席の俺の横に座り、俺の額の汗をタオルで拭いながら、「目をつぶって眠りなさい」などと言って俺を寝かしつけてくれた。

 母の声と車の揺れが心地よく、昨夜同様、俺はたちまち深い眠りに落ちて行くのだった。

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