委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 そんな事が、走馬灯のように私の脳裏を過ぎり、気付けば私は涙を流していた。そんな無様な顔を相原君に見られるのが嫌で、私は彼に背を向けると、土砂降りの雨の中を走って行った。もちろん泣きながら。


 次の日、学校で相原君から何か言われるかなと思ったけど、彼は何も言って来なかった。それ以前に、彼は私を見ようともしなかった。

 たぶんだけど、せっかく傘に入れてくれたのに、“ありがとう”の一言もなく走り去った私に、彼は腹を立てているのだと思う。それは当然の事だと思うけども。


 だったら、私の方から相原君に謝るべきだろう。そう思うのだけど、それが出来ないまま数日が過ぎてしまった。


 放課後、臨時のホームルームを行う事になり、クラス委員長の私は、もう1人の委員長の加藤君と共に教室の前へ行った。

 そう。私はクラスの委員長をやらされている。3年になった時、担任の先生が単純に成績の良い順に各委員を指名していったらしい。

 ちなみに、本当は男子で委員長に指名されたのは加藤君ではなく阿部君だったらしい。ところが阿部君は、自分は性に合わないからと、それを固辞したらしい。それで仕方なく、次点の加藤君になったとか……

 やんちゃな阿部君らしいなと思った。阿部君って、性格だけなら悠斗に似てるかもしれない。

 後でそれを聞き、私だって性に合わないのだから断れば良かったと思ったりもしたけど、たぶん気の弱い私は出来なかったと思う。


 今回のホームルームの議題は、秋に行われる文化祭の実行委員を決める事だった。各クラスから、男女1名ずつを選出しなければいけないらしい。

 すっかり委員長が板に着いた加藤君の進行でホームルームが始まり、まずは男子から立候補を募ったけど、当然ながら誰も立候補する人はいなかった。それはそうだと思う。ただでさえ面倒なのに、私達3年は来年の受験を控えているのだから。

 自ずと他薦になる、と思ったのだけど……


 なんと、相原君が立ち上がった。

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