委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 大人しそうな相原君が、まさか立候補するとは思ってもみなかった。でも、彼は真面目で優しいから、誰もやらないなら自分が……と、嫌な役を進んで買って出たのかもしれない。

 だとすると、相原君らしいなと私は思った。

 次は女子の選出だけど、当然ながら立候補する人はなく、他薦という事になったのだけど、相原君が長い手をスッと上げた。

 どうやら相原君は、女子の誰かを推薦するらしい。彼は、いったい誰を推薦するんだろう。なんだかわからないけど、モヤモヤした気持ちで見ていたら、立ち上がった相原君は、おもむろに腕を前に伸ばし、こちらを指差した。もっと正確に言えば、私を指差していた。真っ直ぐ私を見つめながら……


わ、私を指名?


 委員長をやらされている私が、まさか指名される事はないと思っていただけに、私は慌ててしまった。でも、すぐに加藤君がそれを言ってくれて、私は正直ホッとしたのだけど……


「そういう決まりですか?」

 意外なことに、相原君は加藤君に食い下がった。


「いや、決まりという事は……」

「だったらいいじゃないですか。もし受け入れてもらえないなら、僕も実行委員を辞退します」


 悠斗に似た声で、相原君はきっぱりとそう言い切った。


相原君には、こういう一面もあったんだ……


 優しくて、大人しいと思っていた相原君に、男らしい一面がある事を知り、私は彼を見直した。でも、そうさせたのは他でもない私だと思う。たぶん相原君は失礼な事をした私に腹を立て、その腹いせに私を指名したのだと思う。


「桐島さん、どうする?」


と加藤君から小声で聞かれた私は、迷わず「やります」と答えた。相原君が辞退したら困るからという事と、彼となら、やってもいいかなと思ったから……

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