委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 ホームルームは終わり、解散という事になったのだけど、いつになく周囲の視線が私に向いている事に気付いた。それと、相原君にも。

 ああ、そういう事か。

 たぶんみんなは誤解してるんだ。相原君が私に気がある、みたいに。あの雨の日の事をみんなは知らないから。

 きっと面白おかしく噂されるのだろう。“アイスクイーンは果たして落ちるのか?”とか……

 そう。私は一部の男子から、“アイスクイーン”と呼ばれているらしい。いつも無口で滅多に笑わない、氷のように冷たい女。そんな風に思われているらしい。

 でも、それは私にとってはむしろ好都合だ。敢えてそうして来たのだから。去年の夏から。

 そうする事で、私は周囲に壁を作って来た。学校でも、家でも。誰にも私の過去に触れてほしくないし、誰とも関わりたくなかった。また同じクラスになった沙織さんにでさえ、私は心を開く事が出来なかった。


 周囲のまとわり付くような視線が嫌で、私はさっさとバッグを肩に掛け、足早に教室を出て行こうとした。すると、


「桐島さん!」


 後ろから私を呼ぶ遠慮がちな声が聞こえ、私はピタッと足を止めてしまった。悠斗とそっくりの、相原君の声を聞くと、つい私は過剰に反応してしまう。

 当然ながら、周囲の視線は私に集中した。私はいつものように表情を殺し、わざとゆっくり振り向いた。

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