委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
「やっぱり桐島さんでしたね。隣、いいですか?」


 相原君は、微かにだけど嬉しそうな顔をしてそう言った。相原君って、ほとんど表情を変えない人だと思っていたけど、近くで見るとそうでもないみたい。それとも……私限定?

 なんて、何考えてるんだろう、私。


 相原君が隣にいたら、気が散って勉強に支障が出そうだ。かと言って、断るわけにも行かないし、どうしよう……

 あ、そうだ。無視すればいいんだ。“アイスクイーン”になって。うん、そうしようっと……

 ということで、私はわざと低い声で「どうぞ」と言い、知らん顔でテキストに視線を戻した。

 相原君は静かに私の横に座り、私に話し掛けたりはしなかった。もちろん私からも。


 まもなくして男の先生が教室に入って来て、簡単な自己紹介の後すぐに授業が始まった。私は隣の相原君の存在を忘れ、授業に集中、のはずだったのだけど……

 もう……

 相原君ったら、横目でチラチラ私を見るものだから、気にしたくないんだけど気になってしょうがなかった。


 “見ないでくれる?”って言おうかと思ったけど、それを言うとこっちが自意識過剰と思われそうなので、何も言わずに無視する事にした。というか、気付かないふり?

 そうしたら、相原君ったら大胆にも顔をこっちに向けて私を見るようになった。

 もう、何なのよ……。私の顔に何か着いてるの?


 さすがに私は恥ずかしくなり、顔が熱くなってしまった。気付かないふりはもう限界だな、と思ったら、私以外でも気付いた人がいた。

 先生が、怖い顔で相原君を睨んでいた。

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