委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 うわあ、先生、相当怒ってるなあ。

 それはそうだと思う。授業の初っ端から横を向いてちゃね……


「おい、そこの君!」


 ほーら、怒られた。ところが、相原君はそれさえも気付いていない。何やってんだろう。

 私は呆れて相原君を向き、思わず「バカ」と言ってしまった。小さな声で。

 それでも相原君はまだ気付かないみたいで、なぜか顔を赤くして私のことをボーッと見ていた。

 もう、世話がやけるなあ。


「先生が怒ってるよ」

「え?」

 “え?”じゃないでしょ?

「前!」

「前?」


 それでようやく相原君は前を向き、先生に怒られてる事に気付いたみたい。


「よそ見してるって事は、こんな問題は軽いって事なんだろうね?」

「いやあ、それは……」

「だったら、ここに来て解いてもらおうかな」

「あ、はい……」


 という事になったけど、ちょっと待って。その問題って、一見するとシンプルで簡単に解けそうだけど、実は5次方程式を解く問題で、学校では習っていないはず。しかも東大の出題らしいから、要は難問だと思う。

 のこのこ出て行ったら、恥をかくのがオチだわ。それが先生の狙いなんだろうけど。


「謝っちゃいなさいよ」


 と私は相原君にアドバイスした。それが一番賢明だと思うから。ところが、


「う、うん……でも、その前にやってみるよ」

「バカね、解けるわけないじゃない。東大で出題されたのよ?」

「あ、そうなんだ……」


 という感じで、相原君は涼しい顔して立ち上がり、前へ出て行ってしまった。

 もう、知らないんだから!


 相原君が恥をかかされるところなんか、見たくないのになと思いながら見ていたら、彼は少しの間黒板を見上げて首を傾げていたけど、やおらチョークを持った右手を上げると、ススッと黒板に数式を書き始めた。

 もしかして、適当に書いてるのかしら。だとしたら、先生は余計に怒っちゃうのに、バカだなあ。


 と思ったのだけど、


「先生、これで合ってますか?」

「……あ、ああ、合ってる」


 えっ? うそでしょ!?

 先生は悔しそうな顔をし、クラスのあちこちで『おー!』という感じのどよめきが起きた。もちろん、私もびっくりだ。


 相原君って、実はすごく頭いいんだ……

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