委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 午後の英語の授業が終わったのは、もう夕方に近い時刻だった。当たり前かもしれないけど、学校の授業よりハードだった。おかげでみっちり勉強出来たのだけど。


 帰り支度をして立ち上がったところで、相原君が話し掛けてきた。


「桐島さん、一緒に帰っていいですか?」


 彼とはたぶん帰る方向は同じだし、一緒に帰るのは全然構わない。だったら、あれを相原君に頼んでみようかなあ。つまり、先生から解けと言われた数学の難問の解き方。先生ったら、腹が立ったのかちゃんと解説してくれなかったのよね……

 うん、そうしよう。


「いいわよ」


 と答えると、相原君は嬉しそうな顔をした。


「相原君……」


 塾を出たところで、私は横を歩く相原君に話し掛けた。例の数学の問題の解き方を、歩きながら教えてもらおうと思ったから。



「あの問題、どうやって解いたの? 数学の問題……」

「ああ、それはですね……」


 と相原君は説明しかけたのだけど……


「結構込み入ってるんですよね。どこかで座って、フラッペでも食べながら話しませんか?」

「フラッペ?」

「かき氷です」

「知ってるわよ、それくらい」

「す、すみません」

「そうね……」


 つまり喫茶店へ行こうって事よね。いいのかなあ、そんな風に相原君と接近しちゃって。危険じゃないかしら……

 と言っても、危険なのは相原君ではない。彼は大人しくて優しくて、逆に安全な男の子だと思う。危険なのは、むしろ私の方だ。心の中で、警鐘が鳴ってる気がするのよね。

 “これ以上、彼に近付くな”って……

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