委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 相原君は、悠斗の事を知ったらどう思うんだろう。あるいは、もう知っていて、それでも私に近付いてきてるのかな。

 だとしても、あの事を知ったら引かれると思う。家族以外は、沙織さんでさえ知らないあの事を、もし知られたら……


 やっぱり相原君とは距離を置かなくちゃだわ。そう思ったのだけど……


 二人ともアイスコーヒーを頼み、相原君は意外にも甘いのが苦手との事で、コーヒーをブラックで飲んでいた。そう言えば、悠斗もそうだったっけ。二人の共通点がひとつ増えたな、なんて……


「ちっとも込み入ってないじゃない!」


 ようやく相原君から例の数学の問題の解き方を聞いたのだけど、ものの1分も掛からなかった。ちょっとした発想の転換が、解く鍵だったんだ。

 それなら歩きながら話せば済む事で、彼が言った『込み入ってる』は、嘘だったという事だ。それで私は、つい彼を怒鳴ってしまった。

 
「ごめんなさい!」

「もう、なんで嘘ついたの?」

「それはその……き、桐島さんと、お茶したかったから……」


 それは“告白”とは言えないと思うけど、相原君が私に好意を持ってくれているのは確かなわけで、恋愛経験は悠斗との1回しかない私は、恥ずかしくて顔がカーッと熱くなってしまった。

 そんな私の顔を相原君に見られ、


「ば、バカみたい!」


 と照れ隠しに私は小さく叫んだのだけど、その瞬間、壁が脆くも崩れ落ちた気がした。つまり相原君との間に築きかけた心の壁が、ガラガラと音を立てて……


 そう。私は、はっきり相原君に興味を持っている。特に声やその他、悠斗との共通点に……

 その気持ちを誤魔化し、彼を自分から遠ざけようと思ったけど、それはもうやめる事にした。所詮それは無理なのだし、あくまで友達として、深入りさえしなければいいのだから。そしてそれは、簡単に出来ると思ったんだ。その時は……

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