委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 相原君が乗り降りする駅で電車を降り、まずは駅前のコンビニへ寄った。電話で女性から言われた通り、レトルトのお粥を買うためだ。

 お粥にも種類が色々あって、迷った末に紅鮭と玉子の二つを買った。相原君がどっちを選ぶかわからないけど、選ばなかった方を私が食べようと思って。だって、お腹が空いちゃったんだもん。

 お粥の他にインスタントの野菜スープなんかも買い、その後住所を頼りに歩いて行くと、目指すマンションはすぐに見つかった。

 電話の人が『大きいマンション』と言っていただけの事はあり、軽く30階はあろうかと思われる、大きくて背の高いビルだった。

 聞いていた部屋の番号を呼び出すと、すぐにさっきの人が応答に出た。


「どうぞ」

「お邪魔しまーす」


 玄関を開けてくれたのもその人だと思うけど、私より何才か年下に見える、ボーイッシュな女の子だった。電話の感じでは、私と同い年か少し年上かなと思っていたのだけど……


「はじめまして。桐島玲奈です」


 私はご挨拶をし、彼女に向かってお辞儀をしたのだけど、彼女はなぜか無言で私の顔をジーッと見ているだけだった。そして、少し経ってから、


「わたしはマコトです」


 と、なぜか名前だけを言い、やはり私の顔をジーッと見続けていた。


「あ、相原君は……?」


 沈黙に耐え切れず、私がそう言うと、マコトさんはフッという感じで私から視線を外し、


「こっちよ」


と言った。

 もしかしてこの人、私に敵意を感じてる?

 この人も相原君を好きで、それでなのかな。でも、だったらわざわざ私を呼ぶかしら?

 そんな疑問を抱きつつ、私は靴を脱ぎ、マコトさんに付いて相原君の部屋に入って行った。

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