LOVE or DIE *恋愛短編集*
「まあ……始まってしまいました。隆雄さん、立ち会わなくてよろしかったのですか?」
大輪の花が散っていく残り火に見惚れていた爽子は、漸く我に返ったようにそう尋ねた。
ゆっくりと顔を上げた隆雄は、穏やかな笑みを湛えて首を横に振る。
「いいのです。初めから僕は、爽子さんと一緒に花火を見るためにここへ参りましたから」
どくんと跳ねた胸の音を誤魔化すように、爽子はすぐに夜空へ視線を戻した。
心臓の音も赤らんだかもしれない顔色も、きっと次々に上がる花火が隠してくれるに違いない。
風鈴の隣に吊るされた小さな袋の中の囚われの金魚が、割り箸の先から今にも飛び立ちそうな聡次郎の力強い金魚が、硝子の殻に優しく守られた明仁の繊細な金魚が、そろって夜空を見上げている。
打ちあがる花火を、空に舞い散る花を。
「綺麗ですね……」
「お好きですか?」
「ええ、とても」
隆雄の花火はどれだろうか。
それとも、打ち上げに立ち会わずここにいるということは、今回の花火には彼の作品は参加していないのだろうか。
爽子にはよく分からない世界だった。
彼の住む世界には家の檻があるのかないのか、彼は元から自由だったのか、逃げて来たのか、未だに闘っているのか。
心配がさした。
だがそれでも、夜空を彩る花たちからは目が逸らせない。
風に乗って流れてくる火薬の匂いが余計に気持ちを高揚させた。
その高まる気持ちが何なのか、爽子は知らない。
初めて感じるものだった。
大輪の花が散っていく残り火に見惚れていた爽子は、漸く我に返ったようにそう尋ねた。
ゆっくりと顔を上げた隆雄は、穏やかな笑みを湛えて首を横に振る。
「いいのです。初めから僕は、爽子さんと一緒に花火を見るためにここへ参りましたから」
どくんと跳ねた胸の音を誤魔化すように、爽子はすぐに夜空へ視線を戻した。
心臓の音も赤らんだかもしれない顔色も、きっと次々に上がる花火が隠してくれるに違いない。
風鈴の隣に吊るされた小さな袋の中の囚われの金魚が、割り箸の先から今にも飛び立ちそうな聡次郎の力強い金魚が、硝子の殻に優しく守られた明仁の繊細な金魚が、そろって夜空を見上げている。
打ちあがる花火を、空に舞い散る花を。
「綺麗ですね……」
「お好きですか?」
「ええ、とても」
隆雄の花火はどれだろうか。
それとも、打ち上げに立ち会わずここにいるということは、今回の花火には彼の作品は参加していないのだろうか。
爽子にはよく分からない世界だった。
彼の住む世界には家の檻があるのかないのか、彼は元から自由だったのか、逃げて来たのか、未だに闘っているのか。
心配がさした。
だがそれでも、夜空を彩る花たちからは目が逸らせない。
風に乗って流れてくる火薬の匂いが余計に気持ちを高揚させた。
その高まる気持ちが何なのか、爽子は知らない。
初めて感じるものだった。