LOVE or DIE *恋愛短編集*
「爽子さん」
連続して打ちあがっていた花火が一旦途切れた時に、ずっと無言で空を見つめていた隆雄が漸く言葉を発した。
「次に上がる大玉が、僕が作ったものです」
「まあ! それは楽しみだわ。どれだろうと思っておりましたの。ありがとう、教えてくださって」
爽子が満面の笑みで答え、期待を込めてまた空へと視線を戻したその瞬間、巨大な赤い金魚が夜空に羽ばたいた。
その華麗な舞を、ほんの僅かの余韻を残して消えていく儚さを、刹那の美しさを。
その目に、心に焼き付けるかのように、爽子は瞬きひとつせずにじっと見つめた。
あんな風にほんの一瞬でも、自由に大空に羽ばたいて散れるのならば――、
「爽子さん」
「――はい」
花火はまだ続いていた。
今空を彩るのはもう金魚ではない。
打ち上げが始まった時と同じ、代わり映えのない牡丹や黄金やし達である。
隆雄はたった一発、自らが作った大玉を忍ばせてここへ来た。
あの金魚花火は、花火師の統領である父には認めてもらえなかった失敗作であった。
「僕はこの街を出ていきます。最後にあなたとあれを見れて良かった。お幸せに」
立ち上がった隆雄の手を、爽子は咄嗟に掴んだ。
引き留めることにどんな意味があるのだろう。
彼の苦しみが、何故だか彼女にはまっすぐに伝わっていた。
或いは自分は、連れていって欲しいとでも懇願するつもりなのだろうか。
連続して打ちあがっていた花火が一旦途切れた時に、ずっと無言で空を見つめていた隆雄が漸く言葉を発した。
「次に上がる大玉が、僕が作ったものです」
「まあ! それは楽しみだわ。どれだろうと思っておりましたの。ありがとう、教えてくださって」
爽子が満面の笑みで答え、期待を込めてまた空へと視線を戻したその瞬間、巨大な赤い金魚が夜空に羽ばたいた。
その華麗な舞を、ほんの僅かの余韻を残して消えていく儚さを、刹那の美しさを。
その目に、心に焼き付けるかのように、爽子は瞬きひとつせずにじっと見つめた。
あんな風にほんの一瞬でも、自由に大空に羽ばたいて散れるのならば――、
「爽子さん」
「――はい」
花火はまだ続いていた。
今空を彩るのはもう金魚ではない。
打ち上げが始まった時と同じ、代わり映えのない牡丹や黄金やし達である。
隆雄はたった一発、自らが作った大玉を忍ばせてここへ来た。
あの金魚花火は、花火師の統領である父には認めてもらえなかった失敗作であった。
「僕はこの街を出ていきます。最後にあなたとあれを見れて良かった。お幸せに」
立ち上がった隆雄の手を、爽子は咄嗟に掴んだ。
引き留めることにどんな意味があるのだろう。
彼の苦しみが、何故だか彼女にはまっすぐに伝わっていた。
或いは自分は、連れていって欲しいとでも懇願するつもりなのだろうか。