LOVE or DIE *恋愛短編集*
暗黙の内に、視線が絡み合った。
夜空を照らす明かりも音も、もう気にならなかった。
集まった金魚たちだけが、何も言わずに二人を見つめている。
それぞれの想いを抱えて。
「――爽子さん。ここにはあなたの痛みを理解してくれている人が、沢山いますよ」
諭すように隆雄は言った。
そっと肩に触れ、押し戻すように爽子を座らせる。
「僕はあなたを『掬う』ことは出来ても……きっと『救う』ことは、出来ない」
言葉を残し、背を向け、隆雄はそのまま去って行こうとする。
「隆雄さん!」
その背中に向けて爽子は叫んだ。
思うような大きな声は出ずに掠れた。
それはそのまま、彼女の胸の悲痛の現れのようだ。
「どうしてですか? 私がそれを望んでも? 隆雄さん!」
逡巡したように隆雄の足は止まる。
それでも振り返ろうとはしない背中に、爽子は裸足のまま駆け寄って縋りついた。
「隆雄さん、隆雄さん!」
何度も繰り返し名前を呼んで泣き縋る爽子を背に感じたまま、男はじっと目を閉じて耐えた。
耐えて耐えて、この泣き声がおさまったら振り返らずに行くつもりだった。
最初から最後の一瞬まで、彼はそのつもりだった。
夜空を照らす明かりも音も、もう気にならなかった。
集まった金魚たちだけが、何も言わずに二人を見つめている。
それぞれの想いを抱えて。
「――爽子さん。ここにはあなたの痛みを理解してくれている人が、沢山いますよ」
諭すように隆雄は言った。
そっと肩に触れ、押し戻すように爽子を座らせる。
「僕はあなたを『掬う』ことは出来ても……きっと『救う』ことは、出来ない」
言葉を残し、背を向け、隆雄はそのまま去って行こうとする。
「隆雄さん!」
その背中に向けて爽子は叫んだ。
思うような大きな声は出ずに掠れた。
それはそのまま、彼女の胸の悲痛の現れのようだ。
「どうしてですか? 私がそれを望んでも? 隆雄さん!」
逡巡したように隆雄の足は止まる。
それでも振り返ろうとはしない背中に、爽子は裸足のまま駆け寄って縋りついた。
「隆雄さん、隆雄さん!」
何度も繰り返し名前を呼んで泣き縋る爽子を背に感じたまま、男はじっと目を閉じて耐えた。
耐えて耐えて、この泣き声がおさまったら振り返らずに行くつもりだった。
最初から最後の一瞬まで、彼はそのつもりだった。