LOVE or DIE *恋愛短編集*
「うわ、ひでぇなコレ。あんた、高いとこ大丈夫?」


風が吹き荒れる。
窓も壁も、手すりもない。


「こっから撒く気? もうちょっと見晴し良いトコ途中にあったけど」


確かにだ。
夢も希望もあったもんじゃない。
こんなところじゃ、真希も浮かばれない――かもしれない。
でも。


「駄目よ、ここよ。真希はね、目的地手前で引き返すようなことは絶対しなかったんだから。例え辿り着く前からしょぼい予感がぷんぷんしてても、絶対によ」


最初にここと決めたのだ。
ならここにしないと、真希に失礼だ。


「……あんたも、そんな感じだけどね」

「まあ、類友ってやつかもしれないけど」

「ところで撒くのは、一部だけなの?」

「だって私たち、まだ日本一周の途中なのよ」

「ああ、なるほど」



鞄から小瓶を取り出して少量だけ手に取ると、中塚弘樹は私の手のひらからソレをほんのひとつまみ取った。


「――付き合ってくれんの?」

「そのために来たんだけど」

「付き合い、いいんだ」

「うん、まあ……」


彼が顎で外を指して、そのジェスチャーに促され、私たちは一緒に真希の骨を撒いた。

風で、半分くらい戻ってきた気がするけれど。
それすらなんだか、可笑しくて。

中塚弘樹は声すら出して遠慮なく笑うから、思わず顔をしかめた。


「ちょっと、真面目にやってよね」

「いやいや。これでも大真面目」
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