LOVE or DIE *恋愛短編集*
日本一周の約束を果たさないまま、真希は逝ってしまった。
だから私が、これから日本中に彼女を撒くのだ。


「ありがと、付き合ってくれて。初っ端で泣いたら真希に怒られるとこだったわ」

「うん、まあ」

「ほんと、付き合い良いのねあなた」

「うん、まあ」

「……そればっかり?」

「いや、まあ……」



言葉の途切れた中塚弘樹は、そのままじっと海を見ていた。


それから確認するみたいに指先を見る。
さっき真希を摘まんだ指だ。

横顔が、その指に何かぶつぶつと喋りかけていた。


そして何か吹っ切れたみたいに、彼は唐突に話し出す。




「あのさ、これで終わりじゃないから」

「……は?」

「始まったばっかなんでしょ? 日本一周」

「え、うん、そうですが」

「ちゃんと付き合うから、最後まで」

「……あの、中塚さん」

「迷惑?」

「いえあの、そうじゃ」

「だから、名前。教えてくれませんかね、そろそろ」




無駄に楽しいのは、旅先のテンションだろうか。

海風に乗って、真希が私たちの周りを飛んでいた。

くすくす笑いながら。
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