LOVE or DIE *恋愛短編集*
「今から。……仲良くなりたいんだけど」



――全てを見透かしたように、桐谷は笑った。



「奇遇ですね」



あの時、ぼやけて見えなかったものが


見ようとしなかったものが



「私も、そう思ってたとこよ」



――ここに、あの時の光の国のような煌びやかさはないけれど


安さだけが売りの、ただの居酒屋チェーン店だけど


ぎゃあっと大声で騒ぎ立てる周りは、耳を塞ぎたいほどうるさいけれど



今、この時



はっきりと、見えた。



「6年越しって、遅過ぎない?」


「お互い様だろ」



あの時、俺は

ぎこちない初めてのキスを交わした、この子に



――恋に落ちていたんだ。
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