LOVE or DIE *恋愛短編集*
「やっぱ穴があったな、この作戦」

最初のタイムアウトでベンチに戻ってきた悠太は笑いながらそう言った。

「俺、速攻走るタイミングちょっと遅らすわ。一旦サイドにひらくから、リバウンド取ったら俺に回して」

それはロングパスからのワンマン速攻のチャンスを放棄する発言だった。

「どうすんだよ、すぐ追いつかれるぞ」

「ドリブルで崩す。俺にパス出したら、クロスして逆サイド前に走って」

コートの図面が書いてある作戦板の上で色つきの磁石を動かしながら、悠太が動きを説明する。
その役目を担う2人は、大きく頷いた。

「ジュン、ゴール下はどう?」

「1対1で部長を跳ね返すのは無理だけど、3対2だからな。今のところなんとかなってるよ」

ただし、後半はどうかな、と純也は苦笑を浮かべた。

「ゴール下に代えはいないからな、頼むぜ」

「おい、俺たちの出番はまだか」

控え選手代表で、雅樹が声をあげた。

「疲れが出る前に交代しとこう」

ここまで攻撃を速攻に頼ってきた2年生チームは、守っている時間のほうが極端に長かった。
体力的な疲れより、外角シューターのケアに当たっている2人の精神的な消耗が激しい。
< 221 / 301 >

この作品をシェア

pagetop