LOVE or DIE *恋愛短編集*
レジの清算が終わると、悠太は渡されたドリンクを彼女に向けて差し出した。

「これ、引っ越しの餞別。店の限定商品なのに店員が飲んだことないとか、おかしいでしょ」

目を見開いて驚いた風な彼女は、最後に満面の笑みを返してくれた。



「さよなら、佳織さん。お幸せに」


自動ドアをくぐりながら小さく呟いたその言葉を、『ピロピロン』がかき消した。





佳織に勇気を与えた言葉は、悠太のものではない。

悠太自身も奮い立たせたそれは、紗耶香が残した言葉だった。


同じバスケ部であり、2、3年で同じクラスとなった佐野 悠太と日野 紗耶香が、肩を並べて2人で話をしたのは、中学3年間を通して、あの公園での10分間だけだった。

















     *fin*
< 265 / 301 >

この作品をシェア

pagetop