LOVE or DIE *恋愛短編集*
バレンタインというイベントはもはや、チョコレート会社と恋人たちの祭典だ――と思う。

この季節にこのイベント、独り身には寒いだけだ。


学生バイトとは言えサービス業に就く私にとっては、今年のバレンタインはただの土曜日。

基本、サービス業は土日祝日の方が忙しい。
今日のような日は当然、独り身優先で朝から強制シフトインだった。


「高岡ー、何イライラしてんだ朝から」

客足が引いた瞬間を見計らって声をかけてきた店長も、同じく独り身なのである意味では同志なんだけど。


「何かめっちゃくちゃ腹立つ。これですよ、これ!」

八つ当たり気味にじろりと睨みつけてから、店内の至る所にどどんと張り出されている限定商品のポスターを指差した。

「カップル限定プレゼント、ミニチョコサンデー!!」


うちはハンバーガー屋だ。
限定商品出すんなら、ハンバーガーで勝負しろっ!
何でもかんでもイベントに便乗しようとする会社の魂胆……腹立つ!


加えてこのミニチョコサンデー、注文を受けたレジスタッフがその場で作らないといけないのだが、小さい割にすこぶる手間がかかるのだ。

その作業中ずっとカウンターの向こうではカップルがいちゃついているわけで。


稀にカップリングが男性2人の時とか、タダでサンデーを貰うための演技なのかそれともマジなのか、いちゃつき具合が半端じゃない。

いらぬ妄想まで働いてしまう!
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