LOVE or DIE *恋愛短編集*
「なんだ、独り身のヒガミか」

「ひっど! 店長だって独り身のクセに」

言い返すと、あいたたた、と胸のあたりを押さえて大袈裟なリアクションをする。
若干頼りない店長だけど、こういう所が憎めない。


「そーじゃなくて。めんどくさいんですよコレ作るのー。なんか目の前でいちゃつかれるし。さっきなんか……」

「あー、さっきの男2人組? あれは生々しくエロかったね」

と、店長はにやにやしながら私の反応窺ってる。
セクハラだ、セクハラ!


「カップル審査でもしてると思われてんのかなぁ。2人連れだったら誰でもOKなのに」

「だったらはっきりそう書いといてくださいよっ!!」

こっちは変なもん見せつけられて、いい迷惑だ。
会社も店長も浮かれたカップルもカップルもどき(?)も、皆まとめて馬鹿バカばかっ!


「今日だけなんだから、そんなにぷりぷりするなって。ほらスマイルスマイル」

白々しい営業スマイルでぽんと背中を叩かれて、前に向き直るとちょうど新たなお客様が現れたところだった。


女の子2人組、これはセーフかと思いきや……。

「おねえさん、このカップル限定って女同士でも大丈夫?」

「は、はあ……」

また無料目当てか、と若干がっくり。
でもそれならそれで、はっきりそう言ってもらった方がこちらも楽というもの。

作り笑いで承ろうとすると、

「ごめんね、うちのハニーがどうしてもこれ食べたいって甘えるからさ。駄目ならお金払う」

「ちょっとやめてよぉ人前で。恥ずかしいよぅ」

背の高い方の女の子が小さい方の腰を抱いて、小さい方の赤らんだ顔はとても演技には見えず。


「……仲がよろしいんですね? 大丈夫ですよー女性同士のカップル様でも」

リアルなカップルだった。
これが百合というやつだ、初めて見た。


衝撃を隠しながら笑顔を振りまく私の内心は、このなんとも言えない苛立ちの矛先を会社に向けるか店長に向けるかで葛藤していた。
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