LOVE or DIE *恋愛短編集*
「ほんっとスミマセン。じゃーもう敬語使わなくていいね?」

「え、そうなるの?」

パッと顔を上げた店長は、「別にいいけど」とまんざらでもなさそうで笑えた。


「真面目な話、店長こそ誰か良い人いないんですか? せっかくバレンタインなのに、誰からもチョコ貰えないなんて可哀相ー」

「え、チョコならほら」

と、どこまで本気なのか、彼は自分でこさえてきたミニチョコサンデーの器を持ち上げてにこりと笑った。


「俺はこれで満足だけど? 高岡と一緒に食べれたしー」


――あれ?
今、なんか、さらりと。
口説き文句に聞こえたのは、気のせいか。

この人が?
……まさかね。


「高岡こそ、誰かにあげないの?」

「今日は1日バイトですぅー」

「はは……それは悪かったって。助かってるよ、ありがとな」


べ、別に特に重要な用事があったわけでもないのに、ちょっと拗ねたフリをしただけでそんな風にまっすぐお礼を言われると困るな。
ぽり、と鼻の頭を掻いて、空になったサンデーの器を避けると持参していたランチのコンビニ袋を開けた。


「バイトの後でも、取ろうと思えば時間取れるでしょ。本当に何にも予定ないの?」

と、何故か店長はしつこくバイト後の予定を聞いてくる。

哀しきかな、予定はすっからかんだ。
けど、なんかそう言うのは癪。


どうしようかな、と思っていたところに、テーブルに置いていた携帯がラインの受信を告げた。
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