LOVE or DIE *恋愛短編集*
コンビニの自動ドアが開き、私を招き入れる。
浮かれた電子音が耳に障った。
戻るのだ、現実に。
夢幻はいつか、終わりを迎える。


メンソールの煙草とライター、手にするのは3ヶ月ぶりだった。
妙に馴染む。
お帰り、とでも言われているように。
そうだ、ここが私の世界なのだ。

ただいま――。


着火は終わりの合図のはずだった。
見ないようにしていた駐車場に、ブラックパールのレガシィがまだ停まっていることに本当は気付いていた。
あなたが嫌がった煙草を、別れた瞬間に吸う私を見て幻滅すればいい。

肺まで深く吸い込んで、3ヶ月分の想いを煙にのせて吐き出した。
このまま夜気に霧散して、消えてなくなってしまえ。


近寄ってくる足音が聞こえた。
気付かないふりをして、じっと煙の行方を見つめていた。


「それ、1本ちょうだい」


始まりの日と同じ言葉を彼が言った。
しまい込んでいた涙が、その瞬間に零れた。

別れはこの人にとっても辛いことなのだと、たったそれだけで理解出来てしまうから。
それ以上の言葉を口に出してはいけないことを、私たちは分かっていた。

よく、分かっていた。


ふた筋の煙が昇っていく。
そのまま天まで届くことなどなく、儚く霧散しながら。





*fin*


(執筆2014/06/18)
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