LOVE or DIE *恋愛短編集*
『陽介さん、ずっとこのままってわけにはいかない。そろそろちゃんとしようじゃないか。一度、顔を出してくれないか』
その電話を受けたのは、12月の始めだった。
仕事の帰り、駅に向かう途中。
周りは皆コートで武装しているというのに、俺だけが秋口と変わらない恰好をしていた。
道理で寒いはずだ――立ち止まっていても季節は流れていくことすら、忘れていた。
「そうですね……年末年始の連休には、一度」
電話の向こうから、小さなため息が聞こえた。
聞かせるためにわざと吐いたものではないことくらいは、俺にも分かる。
待っている、とだけ義父は言い、具体的な日程も決めないままに通話は途切れた。
明確な約束が無ければ、足を運ぶ気持ちはきっと起きないだろう。
義父もそれを分かっていたに違いない。
それなのにギリギリのところで逃げ道を残してくれる優しさは、紗枝と良く似ていた。
こういうところで、親子なんだな、と思う。
顔を上げればやけにキラキラした街が目に入ってくる。
駅前のショッピングモールも周囲の街路樹も電飾に彩られていて、それが近付いているクリスマスのためなのだと今さら気が付いた。
吐く息は白く、薄着の身体は冷え切っていた。
早足に通り過ぎていく周りは皆どこか浮かれているようで、自分だけが取り残されたような気分は払えなかった。
その電話を受けたのは、12月の始めだった。
仕事の帰り、駅に向かう途中。
周りは皆コートで武装しているというのに、俺だけが秋口と変わらない恰好をしていた。
道理で寒いはずだ――立ち止まっていても季節は流れていくことすら、忘れていた。
「そうですね……年末年始の連休には、一度」
電話の向こうから、小さなため息が聞こえた。
聞かせるためにわざと吐いたものではないことくらいは、俺にも分かる。
待っている、とだけ義父は言い、具体的な日程も決めないままに通話は途切れた。
明確な約束が無ければ、足を運ぶ気持ちはきっと起きないだろう。
義父もそれを分かっていたに違いない。
それなのにギリギリのところで逃げ道を残してくれる優しさは、紗枝と良く似ていた。
こういうところで、親子なんだな、と思う。
顔を上げればやけにキラキラした街が目に入ってくる。
駅前のショッピングモールも周囲の街路樹も電飾に彩られていて、それが近付いているクリスマスのためなのだと今さら気が付いた。
吐く息は白く、薄着の身体は冷え切っていた。
早足に通り過ぎていく周りは皆どこか浮かれているようで、自分だけが取り残されたような気分は払えなかった。