LOVE or DIE *恋愛短編集*
夕刻だった。
だが、もう既に辺りは暗い。
日が落ちるのはいつの間にこんなに早くなったのだろう。

家に着いて久しぶりにポストを見れば、随分と郵便物がたまっている。
一番上が紗枝宛てのダイレクトメールなのを見て、軽く目眩が起こった。

ドアを開けても、「お帰り」と言ってくれる人はもういない。
紗枝は、もういない……どこにも。


テーブルの上に放り投げたダイレクトメールやチラシの山の中に、それはあった。
懐かしい、愛おしい、彼女の少しクセの強い丸い文字。


「――紗枝?」


クリスマスイブに届いた。
否、もっと早くにそれは届いていたのかもしれない。

紛いもなく、それは紗枝が俺に宛てた手紙だった。



* * *


陽ちゃんへ


これを読んでいるということは、私は駄目だったのかな。

陽ちゃん、大丈夫かな。
赤ちゃん、ちゃんと生まれてきたかな。

元気出してね、陽ちゃん。
メリークリスマス!

(12月に届くように手配したんだけど、ちゃんと出来てるか心配だな)


* * *



メリークリスマス……。
冒頭を読んだだけで涙が溢れた。

彼女は死ぬ覚悟をしていた。
初めから分かっていて。
この明るい文面を、一体どんな気持ちで書いたのだろう。


紗枝はいつも行事を楽しみにしていた。
クリスマスは中でも一番のイベントだった。

どこかに出かけるのではなくて、俺たちには恒例の楽しみがあった。
一緒に暮らし始めた年に始まって、妙に習慣化したクリスマスの過ごし方が。
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