LOVE or DIE *恋愛短編集*






陽ちゃん、勝手なことをしてごめんね。
出産は母体に危険があるって、初めから分かってたんだ。
黙っていてごめんなさい。


でも、私はどうしても陽ちゃんに家族を作ってあげたかった。
奥さんだけじゃなくて(奥さんって、自分で言うのなんか変だね)

ご両親を早くに亡くした陽ちゃんに、ちゃんと家族ってものを教えてあげたかった。
それを、私が与えてあげたかった。

分かってくれるかな。

ずっとひとりぼっちで淋しいのが当たり前で、淋しいって感情に鈍感になってしまった陽ちゃんに、あったかい家族を教えてあげたかったんだよ。

1人で先に死んじゃってごめんね。
勝手なことした私を怒ってもいいけど、赤ちゃんのことは恨まないで欲しいな。

私から大好きな陽ちゃんへの、最後のプレゼントだよ。


愛して欲しいな、私たちの赤ちゃんを。
私の分も、たくさんたくさん。


男の人が1人で子どもを育てるのはすっごく大変だと思う。
だから、私の両親を頼ってね。
お父さん、お母さんって呼んで、ちゃんと甘えてね。

陽ちゃん、それが家族だよ。


それでも、もし。

もし、陽ちゃんがすごくすごく辛くて、どうしても私たちの赤ちゃんを愛せなかったら。
赤ちゃんは私の実家で引き取ってもらいます。


籍を抜いて、私のことは忘れて、誰か別の良い女性を探して。
もっと健康で、ちゃんとあなたと家族になれる誰かを。

淋しいけど、辛いけど、でも恨まないから。
紗枝は陽ちゃんの幸せを、一番に願っています。


ねえ陽ちゃん。
私たちのこどもを、2人分愛してくれますか?






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