LOVE or DIE *恋愛短編集*
「蟹とかマジで、見るのも嫌だ」
2人きりになると、そう言ってメニューからすら目を逸らす。
「ちゃんと蟹の神様にごめんなさいして、それからおいしくいただくのよ」
「それが供養かよ」
と、呆れたような怒ったような拗ねたような、へそを曲げた返事。
「そうよ。そして呪いは解けるの」
強引に笑顔で押し切ると、肩を竦めた彼は大きなため息を吐き出してから、少し笑った。
しばらくして運ばれてきた料理の数々、綺麗な盛り付けとおいしそうな匂いに思わず顔がほころぶ。
彼はと言えば未だに眉間にしわを寄せているけれど、「さ」とお箸を渡し、2人手を合わせる。
先に教えておいた『呪いを解く呪文』を、声を揃えて。
「「蟹の神様、ごめんなさい。おいしくいただきます」」
それから躊躇いなく箸を伸ばした私に倣って、彼も恐る恐る蟹を口にした。
数秒の無言、のあと、
「……ぷっ」
どちらからともなく、吹き出した。
「おいしいでしょ?」
「うん、ウマい」
俺が轢いた蟹じゃねえけど、と彼が言って、蟹の神様はひとつだから大丈夫、と、良く分からないフォローを入れた。
2人きりになると、そう言ってメニューからすら目を逸らす。
「ちゃんと蟹の神様にごめんなさいして、それからおいしくいただくのよ」
「それが供養かよ」
と、呆れたような怒ったような拗ねたような、へそを曲げた返事。
「そうよ。そして呪いは解けるの」
強引に笑顔で押し切ると、肩を竦めた彼は大きなため息を吐き出してから、少し笑った。
しばらくして運ばれてきた料理の数々、綺麗な盛り付けとおいしそうな匂いに思わず顔がほころぶ。
彼はと言えば未だに眉間にしわを寄せているけれど、「さ」とお箸を渡し、2人手を合わせる。
先に教えておいた『呪いを解く呪文』を、声を揃えて。
「「蟹の神様、ごめんなさい。おいしくいただきます」」
それから躊躇いなく箸を伸ばした私に倣って、彼も恐る恐る蟹を口にした。
数秒の無言、のあと、
「……ぷっ」
どちらからともなく、吹き出した。
「おいしいでしょ?」
「うん、ウマい」
俺が轢いた蟹じゃねえけど、と彼が言って、蟹の神様はひとつだから大丈夫、と、良く分からないフォローを入れた。