LOVE or DIE *恋愛短編集*
いつの間にか彼女は、向日葵よりも白よりも、艶めかしく身体の線が露わになるルビーレッドのドレスが似合うような女になっていた。

夏の陽射しよりも夜の闇が似合う、そんな女だ。


1年に1人だった男がいつからか短期交代制になり、あるいはある時は複数人になった。

成熟した色香を放つ美しい女に、使い捨ての男たちは簡単に引き寄せられる。

それでも彼女が男を近づけるのは、緑の匂いが漂い始める夏の入口から、太陽の余韻が醒める秋の真ん中までだった。

そして何故か、その時期が終わりに近づくにつれ相手が替わる頻度も増えた。

貪るように連日日替わりで。

普段は言い寄る男を選び放題の彼女が憑りつかれたように必死になるこの時期、まるで次の季節までの蓄えをしているようにすら見えた。


それが彼女の古傷に起因していることを知らない者は皆、それを愚かしい行為だと囁いているのだろう。

こんなにも美しく、強く必死で生きている彼女の事を。


秋が深まり広葉樹が色付く頃、彼女はあれだけ撒き散らしていた香を何事もなかったかのように引っ込める。

「お兄ちゃん」と呼びながら僕のベッドにもぐりこんで、わきの下辺りに丸まって眠るのだ。


彼女は、正しくは僕の姪である彼女は、妹のようでも娘のようでもあるこの美しい女は今、僕に一番近くて、そして一番遠い場所にいる。
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