最初で最後の恋

それから一週間。


なんの変哲もない日々が過ぎていった。


もちろん、記憶も戻らないまま。


颯人君と二人で花瓶の花を見ていた記憶を思い出したという以外は、何も。


颯人君は毎日来てくれた。


来るたびに、私が記憶を失う前のことなんかを話してくれた。


けど、どの話を聞いても、まるで思い出せない。


「なんか・・・ごめんなさい」


「気にすんな。元はといえば、俺が悪いんだから」


私が謝ると、決まってそういう颯人君。


俺が悪いってどういうことなのか。


それはまだ聞けずにいる。


「――――あの」


今日は思い切って聞いてみようと思う。


「ん?」


「俺が悪い・・・って。どういうことなんですか?」


「・・・・!」


笑っていた顔が、一瞬にして強張った。


聞いてはいけない様なことだったのかもしれない。


けど、知りたかったから。


なんでか分からないけど、知らないままでいるのが嫌だった。




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